Japan's Depth - Behind Japan galacticos Figure Skating Team #5 Chisako KIUCHI: To Any Destination with her skating and the arts
Our Japanese correspondent Aiko interviewed Chisako KIUCHI @ Meiji Jingu Gaien.
thanks to: Japan Sports for photos, and Paja for illustrations.
By AIKO SHIMAZU 島津愛子
July 14, 2012 in Tokyo

木内千彩子 Chisako KIUCHI © Japan Sports
FS"Bebop Jazz Medley" @ All-Japan 2011


☞ in English


木内千彩子さんはシングルとシンクロを両立してやられている19歳のスケーターです。スケートとアートに懸ける日々は、お名前のように彩りにあふれています。東京ブロック・シニア女子3位でスタートした昨季(2011-12シーズン)、木内選手は全日本に初出場。その全日本後に、ワールドチャンピオンのスウェーデンのシンクロチーム"Surprise"に加入され、現在はスウェーデンでシングルも練習されています。
プリズムみたいな千彩子さんに、一時帰国中の7月にお話を頂戴しました。
皆さんへのビデオメッセージから御覧下さい。

☞ Chisako KIUCHI @ Meiji Jingu Gaien on July 14, 2012
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JS: まず、お正月頃に千彩子さんの取材申請をお送りした際に、佐野稔先生(コーチ)から「千彩子はスウェーデンに旅立ちました。」というメールを頂いて、新年の初サプライズだったのですが、(笑)

CK: (笑)

JS: 「三年間のスウェーデン留学」ということですが、どういった経緯で、「旅立ち」となったのでしょう?全日本の大分前から決まっていたのでしょうか。

CK: いえ、結構、いきなりチャンスが巡って来た、というかんじで⋯

CK: 私、「高校卒業したら(2011-12シーズン後)美大に行きたいな」って目指していて、シンクロ・シングルの練習もやりながら、予備校にも通っていたんですけど、

JS: えー。3つも!

CK: (笑) そこへ、「シンクロのスウェーデンチームに加われる」というお話を頂いて。それが突然のタイミングだったので、私もすごく悩んで⋯ 予備校へずっと行っていて、美大を目指していたのに、それを諦めて向こうに行くのか、ということと、このまま美術を続けるか、ということで悩んでいたんですけど、昨年(2010-11シーズン)のシンクロ世界選手権で、初めてスウェーデンチーム"Surprise"の演技を生で観させて頂いて、その時に、すごい衝撃を受けて。

JS: どんな「サプライズ」演技だったのでしょう?

CK: やっぱり、他のチームはやらないような演技、という魅力があって。隊形変化にしても、一瞬で、瞬きの内に2列から3列になったり、そういった隊形変化のハヤサとか、アクロバティックなリフト、ペア要素にしても、本当に"Surprise"っていう名前の通りに、「他のチームではこれは考えないだろう」というような大技を決めてくるので。毎年毎年、"Surprise"の演技にはそういう楽しみがあって。そんな演技を初めて見た時に、「シンクロってこんなチームもあるんだ!」と思って、それ以来、憧れのチームだったので、「このタイミングは逃したくないな」という思いがすごくあって。

CK: 最終的に、「スケートが好きだ!」という気持ちと、「今の自分に出来ることをやりたい!」と思って、"Surprise"に入る決心をしました。スケートは、スポーツだから、やっぱり若いうちにしか出来ないという面もあるな、と。

JS: そうだそうだ!

CK: だったら、「今はこのチャンスにつかまってみよう」と思って。


JS: 現在はスウェーデンでシングルの練習もされているそうですね。

CK: 向こうに行ったきっかけはシンクロなので、シンクロを主として練習しているんですけど、スウェーデンのコーチに「是非シングルも」とおっしゃって頂いて、今は、シングルの練習にも参加させてもらっています。

JS: スウェーデンの女子シングルには、ヘルゲソン姉妹もいますね。

CK: "Surprise"と一緒にアイスショーに出たりしますよ!

JS: 男子も強豪がいて。スウェーデン、フィギュアスケートが盛んなようですね。

CK: フィギュアスケート自体も盛んだし、シンクロがとっても盛んで。シンクロ大国、というかんじです。世界選手権では、"Surprise"のサポーターが集結して。シンクロの世界選手権はシングルとは全然雰囲気が違っていて、サッカーみたいに、仮装した人がいれば、笛を鳴らす人もいて、ワイワイ応援されています。

JS: そこに音楽と踊りがあって。会場がお祭りみたいですね!

CK: 滑っていても楽しいですよ!応援も、シンクロの魅力のひとつだと思います。技に歓声が上がって、すごいんですよ!盛り上がりが!

JS: そんな楽しいスウェーデンの暮らしは、いかがでしょう?

CK: ホームステイさせてもらって、語学学校にも通っています。

JS: 街、いいですか?

CK: いいですね。ほとんど森だったり、すごく自然がきれいです。空気もきれいだし。

JS: ⋯留学から半年が経って、「寂しい」とかないですか?(笑)

CK: (笑) そんなにないですね。ホームステイ先がチームのメンバーのお宅で、すごく親切にして頂いて、私が寂しくないように・困ったことがないように、と考えて下さって。安心して過ごせる環境を作ってもらっています。大分、会話も出来るようになりました。


木内千彩子 Chisako KIUCHI © Japan Sports
SP"Sabre Dance" @ All-Japan 2011


JS: 昨季のプログラムについて、東京ブロックでの千彩子さんとの衝撃の出会いとなったSP"Sabre Dance"を全日本前に御紹介させて頂いたのですが⋯
ーパソドブレ調のSP"Sabre Dance (剣の舞)"は、Vanessa Maeによるポップアレンジで、阿部奈々美先生の独特の振付です。よくあるような ひらひらした装飾が削ぎ落とされていて、ひとつひとつのムーヴがドラマティックに映えています。男子のプログラムも、もちろんカッコイイですが、女子のプログラムはさらにクール。そんな奈々美先生のカッコイイ振付を、千彩子さんは、ヒップホップのように 背骨をぐっと入れ込んで肋骨を使う動きで芯を決めて、コンテンポラリーダンスのように 長い手足を付け根から振る、というような独特な、世にもカッコイイ踊りで魅せていました。ラストのステップはとんでもなくクイックで、しかも!(首を動かして)顔が残る残る!ー
と!もう、大興奮でお伝えしたんです!!

CK: (笑) ありがとうございます。

JS: 「"剣の舞"なんだけど、"自分が剣になったようなイメージ"で、力強さ、ハリとか、鋭さみたいなものをイメージして振り付けて頂きました」と全日本でお答えでしたが、奈々美先生、ちょっと違う振付ですよね!

CK: 力強いですよね!

JS: 全日本でのお話では、振付は、奈々美先生のイメージを基にお二方で作り込まれる、ということでしたが、曲はどのようにして選ばれましたか?

CK: ショートは、奈々美先生に持って来て頂いて、フリーは、後半の1分位が「私はこれで踊りたい!」という曲("Guns and Roses" – アニメ『バッカーノ!』のテーマ曲)で、前半の2曲("King of Swing" / "Minnie the Moocher")を奈々美先生に組んで頂いて作りました。


JS: これまでの千彩子さんのお話、なのですが、フィギュアスケートはどうやって始められましたか?

CK: シングルを始めたきっかけは⋯ 私がちっちゃい頃、特別身長が低くって。今も低いんですけど、

JS: エェッ!?

CK: (笑) そうなんですよ〜、

JS: !? 何センチですか?

CK: 中一の時に130cmあるかないか位で、今は154cm位です。

JS: ⋯

CK: (笑)

JS: ⋯えーーー。すっごく、大きく見えましたよ!!

CK: (笑) それは⋯ 小さい頃に猛特訓したんですよ、踊りは。すっごいちっちゃかったので、他の選手に比べて迫力がなかったんです。小さい頃はそれがイヤで。「他の選手みたいにアピールが出来ない」と思って、小学生位の時にはそれがコンプレックスで。

JS: ⋯えーーーー!迫力そのもので、ぐいぐいアピールされていて、170cm位ありそうに見えましたよ!

CK: (笑) 本当にコンプレックスだったから、なるべくカラフルな手袋を着けて「大きく見せよう!」とか、踊り自体も「どうやったら迫力が出るかなぁ」とか、小学生の時にすごく気にしていましたよ。

JS: それが、本当に身に付いていますね!⋯びっくりした〜 165cmは絶対ある、と思ってましたよ!昨夏に、神宮(明治神宮外苑アイススケート場)で近藤琢哉選手の練習を拝見させて頂いたのですが、その時にも「キレのある、大きな選手だなぁ」と目を引いていて。

CK: (笑) 全然小さいです。

JS: 手足も長い、という⋯

CK: 練習から「(手足を)長く見せよう!」というのはすごく意識してます。(笑)

JS: その、「大きく見せる」秘訣はどんなことですか?

CK: 秘訣って言うほどじゃないんですけど、注意してやろう、って思ってたこととしては、例えば、手を動かすときに、腕だけの表現にならないように肩甲骨から動かす練習とか、指先足先まで神経を使うこと、指先の表現・頭の使い方とか、

JS: 頭が!びっくりするほど動いてますよ!

CK: (笑) そういったところをすごく気にして踊れたらな、って思ってやっています。

CK: あと、衣装も気にしていて。

JS: !? 千彩子さんのデザインですか?

CK: そうなんです。

JS: ⋯素晴らしいですね!

CK: 手袋を着ける、とか、小学校の頃から「ちょっとでも大きく見せよう」と考えながら、衣装をデザインするのもすごく好きなんです。

JS: そうやって「大きく見せよう」と考えているちっちゃい子、っていうのがだいすきです!

CK: (笑) ありがとうございます。

JS: ⋯と、来た道に戻って、(笑)「きっかけ」なんですけど、

CK: (笑) 小さくって、それで、母親が「小さくても出来るスポーツ」を探してくれて、新体操かフィギュアスケート、と悩んでいたらしいのですが、リンクが近場にあったので、じゃあフィギュアスケートをやってみよう、ということで、やらせてもらうことになりました。それから、どんどん、私自身がのめり込むようになって行って。


JS: シンクロは、どのように始められたのでしょう。

CK: 「ジュベナイル」というクラスがジュニアの下にあって、幼稚園から小学校低学年のシンクロチームもありますが、私が始めたのはすごく最近なんですよ。

JS: !?

CK: 2010-11シーズンです。

JS: エェッ!2シーズン前に!?

CK: (笑) そう、2シーズン前、神宮でシンクロをやっている友達から勧められて。神宮で練習していたので、シンクロチームがあることは知ってて、興味があって、神宮で行われている壮行会でも見たり、「おもしろそうだな」と思っていたところ、誘われたので。「体験」でやってみるか、というのが始まりで、それでやってみて、「あ、この競技はシングルと違う魅力があって、おもしろそうだな!」「じゃあ、今シーズン1年だけでもやってみようかな」ということで。

JS: そうしてスウェーデンに至るんですか!?

CK: (笑)

JS: ⋯運命がころころ変わりますね!(笑)

CK: (笑) 自分でも、まさか海外に行くとは思ってなかったです。自分でもびっくりです!(笑)

JS: 千彩子さんをスウェーデンに送らせた、シンクロの「シングルとは違う魅力」とはどんな魅力でしょう。

CK: 見ている側の魅力、やる側の魅力、と2つあると思うんですけど、
「見ている側の魅力」としては、シンクロは、ディープエッジとか高いスキルのステップワークとか、そういう『アイスダンス』の要素が必要だったり、ダイナミックなリフト、といった『ペア』の要素、『シングル』の、個々の踊りや表現力、と総合的なものが求められていて、それをさらに16人で同調させる『迫力感』があります。

CK: それプラス、シンクロならではの隊形変化とか、隊形で"カタチ"を表現するという『造形』の部分で私はすごく魅力を感じています。

CK: あとは、世界選手権を見ているとすごくよく分かるんですけど、1チーム1チーム、すごく個性があるんですよ。「チームカラー」がある、というか。例えば、私の個人的な表現になっちゃうんですけど、「パステルカラー」とか、そういう柔らかい、「物語が出て来たのかな?」っていうチームだったり、ダイナミックで衝撃を与えるような、強い雰囲気の「ダークカラー」的なチームがあったり、美を追求する、というか、美しさとか滑らかさが際立っている、カラーで言ったら、「透き通っている」、そういうチームもあって、『個性がある』というのも魅力だな、と思っています。

JS: ⋯絶対、今度のシンクロワールド(2013年4月アメリカ・ボストンで開催)、皆見ますね!

CK: (笑) 自分の好きなカラーのチームがあったら、見るのがすごく楽しくなると思います。

JS: やる側の魅力、なんですけど、⋯フィギュアスケートの舞台はとにかく広いから、隊形変化とか、チーム全体像が分かって踊っているのでしょうか?

CK: 大体分かるんですけど、分かっていない部分もあって、そういう面でビデオチェックはすごく入念にして、「外からはどういう風に見えているんだろう」とか。氷に乗って、「ここの位置になれば円はまるく見えているだろう」とか。そういうのを意識して、すごく頭を使わなきゃいけないと思います。

JS: 陸のヒップホップでチームで踊っていると、皆が近いし、全体像を感じながら・自分の踊りもがんばる、っていうかんじなんですけど、

CK: 私もそれはすごく感じていて、やる側の魅力だと思うんですけど、個人競技じゃなくて団体競技だから、なおさら一人一人の存在とかスキルとかが大切になっていくかな、っていう風に思っていて。
それを全員で理解して、お互いに高めあいながら、ひとつの表現を求めていく、ひとつの演技を創る。全員で同じ目標へと向かって行く、そういうチーム競技ならではの魅力がすごくあるスポーツだと思っています。

JS: ⋯これは、「そうだ、シンクロやろう!」って人が出て来ますね!

CK: (笑) ありがとうございます。

JS: (笑) イイのを2つ、頂きました。


JS: そうして、【シングルもやってシンクロもやって学校にも予備校にも行って】という時代が千彩子さんに訪れるわけですが、どういう⋯やりくりをされていたのでしょう?(笑)

CK: (笑) 本当に大変な日は、朝学校に行って、予備校に行って、ちょっと早上がりさせてもらって、シンクロやって、その後シングル、みたいな予定はありました。⋯切り替えないといけませんでしたね!

JS: (笑) ハァ〜、壮絶な⋯『24』な1日ですね!


JS: 美術は、いつ頃からお好きでしたか?

CK: 美術は、本当にちっちゃい頃から好きで。幼稚園生の時から、なんか描いたり作ったりするのが好きでした。

CK: 予備校に通い始めたのが高二なんですけど、美術の道に進もうか、自分自身で「どうしようどうしよう」と悩んでいた時に、「体験」入学があって、「やってみよう」と思って行ったら、講師の方や生徒さんに影響を受けて。「私も、この美術をやって、美大に行きたいな!」という気持ちがどんどん強くなって。それで、「美大に行こう!」とがんばってました。

JS: どんな美術がお好きですか?

CK: 立体系が好きで、絵を描くよりも、造るほうが⋯

JS: あー!踊りも立体だから!

CK: (笑) 関係があるのかも。粘土とか、建築、彫像とか好きですね。

JS: 彫像でも、ジャコメッティとかボテロといった抽象的なもの、ロダンとかルネサンスのものとか、具象の作品、カミーユ・クローデルみたいな激しい作品、モダン、といろいろありますが、どんなものがお好きですか?

CK: 私、結構、抽象的なほうが好きなんです。

JS: 千彩子さんが、例えば粘土で抽象的なものを造る作業と、踊りって、真逆の事だと思うんですけど、

CK: そうですね、そういえば。

JS: 私も立体がすきで、ヒップホップをやっていた時、「みんなの踊り」はなんとなく感じられても、「自分を外から見る」っていう感覚が生まれずに、その、人形使いが人形になる、っていう感覚がないまま終わっちゃったんですけど、千彩子さんは、俯瞰で自分を見る、そのためにどうやって練習されて来ましたか?

CK: 鏡の前で練習する、とかそういうことがすごく必要だと思います。それが重要、というか、それをやっていたから出来るのかな、という部分もあるんですけど。

CK: ただ、いざ踊ってみると、「こういう表現をしたら向こうからこういう風に見られるだろう」というのは絶対把握できなくって。鏡と向かい合わせになって、「こうやって踊ると向こうからはこう見えるんだ」と、それを積み重ねてやっていくうちに、鏡の前じゃなくても、「こういう風に動けば向こうからはこう見えているだろうな」的なイメージが頭の中に入って来ます。

JS: 踊りでイメージを造形する。「感覚が生まれる」じゃなくて「イメージを造り上げる」、と。


JS: それで、千彩子さんもやっぱりヒップホップを習われていた、ということで!「絶対やってる!」と思ってたんですよ!

CK: (笑) 小学校の時はやっていました。ジャズダンス、バレエも習って。

JS: ダンスレッスンも、並行してやられていたんですね。

CK: ⋯バレエのレッスンが、ほんっとにきらいだったんですよ!(笑)

JS: (笑) 同じことを繰り返し巻き返しさせられますね!

CK: バーレッスンとか。「⋯これ、寝るんじゃないかな。」と。(笑) 「でもやらなきゃいけない!」って。その分、ヒップホップのレッスンは好きでしたね。

JS: そういったいろいろな踊りの成果と、小さい頃からの「大きく見せる」研究・造形の探究で、体の部位の使い方が千彩子さんならではのものになっているのですね。


木内千彩子 Chisako KIUCHI © Paja
SP"Sabre Dance"


JS: 小さい頃から洋楽をよく聴かれる、とのことですが、ヒップホップを聴かれていたのでしょうか?

CK: 基本的に、音楽は、気持ちを上げるというよりは、リラックスする時に聴くことが多いです。ヒップホップというよりも、全般的に、ゆっくりな曲を聴いていましたね。R&Bとか。

JS: ⋯なんか、いいですね。いろんなことがお好きですね!

CK: (笑)


JS: 他のスケーターのプログラムで、お好きなものはありますか?⋯"Surprise"のものは外せませんね!

CK: (笑) シンクロはそうですね。シングルで言うと、すごい最近のものなんですけど、羽生君(結弦選手)の、"ロミオとジュリエット"(2011-12FS)

JS: うんうん!

CK: (笑) ⋯は、「こういうの踊れるといいだろうなぁ」って。

JS: あの振付も奈々美先生ですよね〜

CK: そう、力強さの中に脆さとか儚さみたいなものがあって、

JS: あったあった!!

CK: (笑)

JS: ロミオの!中盤のスローパートに、ロミオの心象がね!

CK: そう!あれは、「イイなぁ!」と思いました。


JS: そんな、奈々美先生の振付との出会いについてお聞かせ下さい。

CK: 神宮で、以前 水津瑠美選手と練習していて、その水津選手の振付が奈々美先生で。それを知らずに、ずーっと、「あの子の振付、カッコイイなぁ!」と思っていて、次のプログラムを考える、となった時に、「あの子と同じ振付師さんに作ってもらいたい」と。それが、奈々美先生でした。
奈々美先生に直接お願いして、「いいですよ。」と言って頂いて。

JS: 「あ、これは奈々美先生!」って、奈々美先生のテイストはすぐに分かりますよね。同じクラシックでも、ポップやロックアレンジのものを使われたり。あと、本当に無駄なムーヴがないと思って。

CK: そう、無駄がない。

JS: でもコンテンポラリー過ぎもせず、で。

CK: その選手その選手の特徴をすごくうまく捉えられていて、そのイメージ・雰囲気に合った振付ですよね。

JS: ⋯奈々美先生を昨季の中国杯でお見かけしたんですけど、あんまりにもキレイカッコよくって、メドゥーサに出くわしたみたいに固まっちゃって!記者としてなにか質問を試みようとしたのですが、お声かけられませんでしたよ⋯

CK: (笑) すごくお優しい方ですよ。

(鈴木明子選手の2006-2008SP"Firedance"や中村健人選手の2010-2011FS"Malaguena"も奈々美先生の振付です。)


JS: 小学校六年生の頃から佐野先生のコーチングを受けられている千彩子さんですが、すごくスケートが速くて・踊りが上手で、大柄でないけれど・大きく見えて、同じく佐野先生の生徒さんの琢哉さん(近藤選手)もそうなので、佐野先生の秘伝があるのかな?と想っているのですが。

CK: 近藤君も私も、自己流なところがあるのかな、と思っていて。自分で観察して自分で試行錯誤して、という。そういう面で佐野先生が助けて下さる、と感じています。

JS: 琢哉さんにインタビューさせて頂いた時は、解説のお話通りにおもしろい佐野先生ですけれども(笑)、「細やかな指導をされる」とおっしゃっていましたよ。

CK: 滑っててお声をかけて頂く時は「行けー!」「がんばれー!」みたいなかんじですけど(笑)、話し合う際には、繊細な指導をされますね。


JS: 昨季は、東京ブロック3位から、全日本初出場、となられましたが、ブロックは、ショート3位でしたね!

CK: ⋯?

JS: (笑) 3位でしたよ!

CK: (笑) そうでしたかね。ショートの順位、あまり気にしないようにするんです。フリーの滑走グループを決める、という位のイメージで行かないと、ショートって めちゃくちゃ緊張しちゃって!3つしかジャンプがないし、と思って、ショート苦手だったんです。

JS: 3つのジャンプ、全部決まってたんですよ!

CK: そうですね、昨季は、ブロックも東日本も全日本も、一応ショートのジャンプは全部決まって、びっくりしました!(笑)

JS: やはり、昨季は御自身でも「来たな!」っていう充実のシーズンでしたか?

CK: そうですね⋯ 今まで、結果が実らないというか、怪我したりして沈んでた時期もありましたので、去年は、自分の出来る範囲の演技をし切れたかな、という年で。

JS: シンクロも予備校も行ってたのに!

CK: (笑) やりがいのあった年でした。

JS: 全日本では、ショートでフリー進出、ということで。

CK: フリーは「一番滑走」で。(笑)

JS: お好きな曲の、弾けたフリーで。

JS: 全日本のリポートの更新作業をしていて、随時演技後のコメントを現地から頂いていたのですが、最初に千彩子さんの音声が届いて、「ああ!来た!」って、

CK: (笑)

JS: (笑) 楽しみに開いたら、「一番滑走だから、自分から雰囲気を作っていかないとな」と思っていた、と!「全日本のフリーを盛り上げる」とのことで、もう、泣くかと思いましたよ!

CK: (笑)

JS: 「こんな名言、出て来ないッ!」と思って。エンターテイナー精神が堂に入っている!と。

CK: (笑) ⋯空気とか作っていけたらな、と思っていました。

JS: 去年一年は、絶対に、思い出の一年になりますね!

CK: (頷)


木内千彩子 Chisako KIUCHI © Paja
FS"Bebop Jazz Medley"


JS: 今季の御予定ですが、全日本等への出場はどうなるのでしょう?

CK: スウェーデンで"Surprise"でいる間は、スウェーデンの連盟に移っていますので、日本での試合には出られないです。

JS: あー。残念です⋯

CK: シングルで出るとしたら、スウェーデンの試合に⋯

JS: 逆に!

CK: (笑) "Surprise"のコーチにも、「シングルの試合に早く出なさいよ!」と言って頂いているので。

JS: 出て下さい!出て下さい!

JS: 新プログラムについて、考えられていることはございますか?

CK: 奈々美先生がお忙しいので、今回(一時帰国中)は作れないと思うのですが、「やってみたいなぁ」と思っているのは、ちょっとイメージチェンジになるかもしれないんですけど、私、今、「伸びのあるスケート」を意識していて。これまではそう意識してなかったのですが、シンクロをやることによって、「スケーティングをがんばろう」と思っていて。

JS: アイスダンスのような?

CK: そう、そんな感じです。これまではテンポの速い曲だったのですが、一部でもゆったりとした滑らかな曲で、シンクロでがんばっている伸びのあるスケートを見せたい、「そういう曲で踊ってみたいなぁ」という気持ちがあります。
あとは、タンゴとかで踊ってみたい、というのもあります。

JS: 絶対お似合いです!

CK: (笑)


JS: ここからは、これからの千彩子さんのお話で、シンクロもしてシングルもして、今後、当面の目標としてはどのような形になるのでしょう?

CK: これからどうなって行くのか、自分も予想がつかないですけど、(笑)

JS: (笑)

CK: まさか海外に行くとは思ってなかったから⋯

CK: シングルは、「向こうの試合に出てみたい」というのがもちろんありますし、シンクロは、「チームから認められるような選手になりたい」という思いがすごくあります。「チームの輪」にしっかり入って、チーム競技として立派な演技がしたいな、と。

JS: 三年後には、どんな千彩子さんになられているでしょうか。

CK: 私が今考えているのは、シンクロに関してなんですけど、日本では、シンクロがマイナー競技で、知っている方も少なく競技人口も少ないので、帰って来た時に、日本人の海外シンクロの経験者として、日本のシンクロにすこしでも貢献できたらな、と考えています。
どうにか⋯ いろんな方に知ってもらいたいし、

JS: 知ってもらいましょう!

CK: (笑) 「日本のシンクロが盛り上がって行く」、それに貢献が出来ることをやっていきたいです。

JS: コーチになられたり?

CK: それは全然分からないです。(笑)

JS: (笑) 三年先、って分かんないですよね!

CK: どんな形になるか分からないですけど、せっかく"Surprise"に入れて、海外経験も積むチャンスを頂いたので、それを糧にして日本のシンクロに携われたら、と。それが出来たらうれしいですね。

JS: 三年間で、「これをやってやるッ!あれをやってやるッ!」っていうことはありますか?

CK: (笑) すこし外れたことになるかもしれないですけど、"Surprise"はよくショーに出させて頂くのですが、チームの中でシンクロとシングルを両立してやっているのが私しかいないので、オープニングのキャスト紹介で、ジャンプやスピンっていうソロ演技が出来るというチャンスがあるんです。そういう面を活かしたいな、とすごく思っています。シンクロとシングルを両立しているからこそ出来ることを、と。シンクロとシングルでやっていることが双方でいい影響をし合って、相乗効果で両方が上達するように、と思っています。

JS: それがまさに、昨季だったのではないでしょうか?

CK: そうですかね。(笑)

JS: 今度は、遠い先のお話ですけれど、美術の道は続いていますでしょうか?

CK: (笑) それは、考えてます!北欧はデザイン関係が盛んじゃないですか、だから、向こうの美術学校にちょろんとでも通えたらな、と考えていて。それも、向こうのコーチに賛成して頂いています。向こうでの暮らしでいろんな刺激も受けますし、そのチャンスを活かして、いろんなことを自分の中に吸収できたらな、って。


JS: 自分はこの2シーズンばかりですが、フィギュアスケートの取材をさせて頂いて、「フィギュアスケートは、すごく練習が大変」ということが分かって。まず、リンクがたくさんないし、練習時間も、今日は早朝・明日は深夜、とか、

CK: 練習環境が大変ですね。

JS: 千彩子さんも、腰痛や試合中の骨折等 怪我のところ、ずっと続けられていて。でもそこに、フィギュスケートをがんばれる理由、があると思うのですが。

CK: 「がんばれる理由」⋯

JS: そう、例えば、自分も陸上をやっていたのですが、最初は、それが「すき」だとか得意というところから、技術なり心身なりを「極める」、

CK: そうですね。

JS: そうして行くとだんだん、「雨が降っても雪が積もっても走る!」とか、しんどい・怪我して痛いけど「負けない!」とか、なんか、「がんばることそのもの」に意義を見出しちゃって!(笑)

CK: (笑)

JS: それをまだ進むと、ある日、走ってたら両足のアキレス腱が「カッキンコッキン」いって、倒れちゃって、私、ロボットかな?と思って、

CK: 「カッキンコッキン」(笑)

JS: (笑) そう、『ターミネーター』みたいな音がして!⋯それで、もうがんばれなくなった時、「がんばれることが幸せ」だったのかな、と。

CK: (頷)

JS: 今となっては、自分の成長と共にスポーツが一緒にあった、という感があるのですが、

CK: それはすごく感じますね!生活の一部になってるんですよね。

JS: そう!何度か「やめよう」ということもあったと思うのですが。

CK: 怪我した時とか。

JS: そう、「でも負けない!」って、続けて来られたと思います。

CK: (笑)

JS: その「がんばれる理由」という、ここでイイのを頂戴しまして、最後に〆て頂こう、と思っております。(笑)

CK: えー。(笑)

CK: ⋯ひとつは、スケートをやっていない自分・スケートをやってない生活というのを考えられない、という。やはり、「スケートが私の生活の一部になっている」ということと、根本的に「スケートが好きだ!」ということが大きいんだと思うんですけど、「なにかが出来るようになった」時のよろこび、とか。
努力しても出来ないこともあるけど、それでもなにか出来るようになった時に、「あ、あの時出来なかったけど、でもその努力があったから、今出来たのかな」ということもあって。自分がやって来たことが「実にならない」って感じることも多いんですけど、結果として、必ずしも「実にならなかった」ことはひとつもなかったかな、と思えて。

JS: 経験の先に、道は開けますね!

JS: ⋯自分は夜、毎日同じ時間に走っていたんですけど、いつも出会うおじさんに、ある日、アップ中に止まってるところで声をかけられて。「あんた、いっつも会うけど、ものすごいハヤイよ!」って。(笑)

CK: (笑)

JS: そう、「あ、誰か気に入ってくれる人もいるのか」って、それがものすごいうれしくって!その極めつけが、フィギュアスケートをやるうれしさかな、って。

CK: フィギュアスケートは、スポーツって言っても表現だから、人の心にどう響くかを考えたり、人の心に残る演技をする、というのがフィギュアスケートの魅力だと思っていて、他のスポーツよりもそこが突出している、というか。そこを「追い求める」ということが、自分はすごく好きなんだな、と感じます。
自分自身で終わらないで、

JS: そうだそうだ!アートだ!

CK: (笑) 見ている方に発信する、第三者を考える、他の人からはどう見えているのか、そう考えながら踊るのも楽しいです。

JS: ⋯わぁ〜。イイのを頂きました!!

CK: (笑) そうですか?


木内千彩子 Chisako KIUCHI © Japan Sports
FS"Bebop Jazz Medley" @ All-Japan 2011


+++ 木内千彩子選手 @東京ブロック +++

☞ SP"Sabre Dance"
☞ タブレット・スマートフォン・高画質向け (Dropbox)
剣となって舞う、木内選手の"剣の舞"。空を切るようなイメージが刻まれていきます。バレエのバーレッスンで睡魔に打ち勝って獲得されたのであろう、素晴らしい2番ポジション(イーグル)からの2A、ラストに用意された魅せ場のダンスシークエンスのターン、コーチング中の佐野先生も必見です!

☞ FS"Bebop Jazz Medley"
☞ タブレット・スマートフォン・高画質向け (Dropbox)
ビバップの持つ品・粋・疾走感を3曲で織り成すプログラム。木内選手は、ヒップホップのようにリズムの表と裏を踊りで見せながら、どんどん盛り上げていきます。最後の一番苦しいところでかかる、お気に入りの"Guns and Roses"では、突き抜けるようなハヤサで締めくくります。パジャさんのイラストに描かれた、ギアチェンジをお見逃しなく!(動画では反対向きになっています。)